Herdr入門:複数AIエージェントを1つのターミナルで束ねる
AIコーディングエージェント専用のマルチプレクサHerdrのインストールから使い方まで、tmuxやcmuxとの違い、Claude Code/Codexの並列実行、リモートSSH、Socket APIまで実例とキーバインドを交えて詳しく解説します。
🎯 この記事で学べること
- 1Herdrの特徴と、tmux・cmuxとの違いを理解できます
- 2スクリプト・Homebrew・Nixを使ったインストールができるようになります
- 3ペイン分割・タブ・ワークスペースのキーバインドを使いこなせるようになります
- 4エージェント状態表示(working/blocked/done/idle)で複数エージェントを並列管理できるようになります
- 5リモートSSH接続やSocket APIを使った実践的なワークフローが構築できます
読了時間: 約14分
Herdrとは
こんにちは!今日は「Herdr」について学びましょう。
Claude CodeやCodexといったAIコーディングエージェントを使っていると、こんな場面に遭遇しませんか?
- 複数のエージェントを同時に走らせているけど、どれが入力待ち(blocked)なのか分からず、いちいちペインを見て回っている
- ノートPCを閉じたらエージェントの作業が止まってしまう
- スマホからサーバーのエージェントに接続したいけど、tmux越しだと画像貼り付けやマウス操作がうまく動かない
Herdr(ハーダー)は、まさにこうした悩みを解決するために生まれたAIコーディングエージェント専用のマルチプレクサです。「one terminal for the whole herd(群れ全体を1つのターミナルで)」を掲げ、Rust製の単一バイナリとして既存のターミナルの中で動作します。tmuxがターミナルに対して果たす役割を、Herdrはエージェントに対して果たす——そう考えると分かりやすいですよ。
Herdrは "a binary, not an app"(アプリではなくバイナリ)を標榜しています。GUIもElectronもmacOS専用ラッパーもなく、アカウント登録もテレメトリもありません。約10MBの単一Rustバイナリで、依存関係なしで動きます。2026年6月30日にはGitHubトレンド(デイリー)で1位を獲得し、いま最も注目されるエージェント向けツールの一つです。
なぜtmuxではダメなのか
tmuxは素晴らしいツールですが、AIエージェントが存在する前に設計されました。そのため、tmuxには「エージェントの状態」という概念がありません。
- Claude Codeがタスクを終えてあなたの入力を待っていても、tmuxはそれを知らせてくれません
- Codexが権限確認のプロンプトで止まっていても、tmuxはフラグを立ててくれません
- 結局、あなたは全ペインを手動でのぞいて回ることになります
Herdrはここにエージェント状態の自動検出を持ち込みました。各ペインのエージェントが「idle(待機)/working(作業中)/done(完了)/blocked(入力待ち・ブロック)」のどれなのかを、Herdrが自動で判別して一覧表示してくれます。
tmux・cmuxとの違い
「AIエージェント向けターミナル」というジャンルには、tmux・cmux・Herdrなど複数の選択肢があります。まずは全体像を整理しましょう。
| 特徴 | Herdr | cmux | tmux |
|---|---|---|---|
| 形態 | ターミナル内で動く単一バイナリ | macOSネイティブGUIアプリ | ターミナル内で動くバイナリ |
| 対応OS | Linux / macOS(Windowsはベータ) | macOSのみ | macOS / Linux / BSD |
| 実装 | Rust(約10MB・依存なし) | Swift + AppKit(Ghostty) | C |
| エージェント状態表示 | あり(working/blocked/done/idle自動検出) | あり(通知リング) | なし(手動確認) |
| 既存ターミナルで動く | ○(WezTerm/iTerm2/Kitty等の中で動作) | ×(アプリ自体がターミナル) | ○ |
| リモートSSH対応 | ○(herdr --remote) | ローカル専用 | ○ |
| セッション永続化 | ○(デタッチ/リアタッチ) | 自動復元 | ○(プラグインで強化) |
| 操作系 | プレフィックスctrl+b+マウス優先 | Macネイティブ(Cmd系) | プレフィックスctrl+b |
| ライセンス | AGPL-3.0(+商用ライセンス) | AGPL-3.0 | ISC |
🔄 使い分けのポイント: cmuxは「macOSローカルで完結する開発」に強いGUIアプリ、Herdrは「クロスプラットフォーム&リモートサーバー」でエージェントを束ねたい人に強いターミナル内バイナリです。tmuxからの乗り換えを考えているなら、キーバインドが似ているHerdrは移行コストが低いですよ!
Herdrはtmuxやzellijを置き換えるものというより、「エージェントを意識した多重化」に特化した選択肢です。プレフィックスキーがtmux・zellij同様のctrl+bなので、これらの経験者はすぐに馴染めます。
インストール
HerdrはLinux/macOSが安定版、Windowsはプレビューベータです。いくつかの方法が用意されています。
インストールスクリプト(Linux / macOS・推奨)
もっとも手軽なのが公式のインストールスクリプトです。
# Linux / macOS
curl -fsSL https://herdr.dev/install.sh | sh
パッケージマネージャー
すでにHomebrewやNixを使っている方は、そちらからも導入できます。
# Homebrew
brew install herdr
# Mise(グローバルに導入)
mise use -g herdr
# Nix(ビルド不要で即実行)
nix run github:ogulcancelik/herdr
安定版のバイナリはGitHubのReleasesページからも直接ダウンロードできます。ソースからビルドしたい場合は、リポジトリをクローンして cargo build --release を実行するだけです。依存関係が少ないので、ビルドもシンプルです。
Windows(プレビューベータ)
WindowsはまだベータですがPowerShellから試せます。
powershell -ExecutionPolicy Bypass -c "irm https://herdr.dev/install.ps1 | iex"
アップデート
インストールスクリプト経由で入れた場合は、専用コマンドで更新できます。
# Herdr自身を最新版に更新(インストーラー管理版)
herdr update
herdr update が使えるのはインストーラー(install.sh)で入れた場合です。Homebrew・mise・Nixで入れた場合は、それぞれのパッケージマネージャー(brew upgrade herdr など)で更新してください。
基本的な使い方
起動と接続
インストールが終わったら、herdr と打つだけでサーバーが起動します。すでにセッションが動いていれば、そこに再接続します。
# サーバーを起動、または既存セッションに再接続
herdr
# キーバインド一覧を表示(迷ったらまずこれ)
# ctrl+b then ?
Herdrのプレフィックスキーは ctrl+b です。tmuxと同じなので、ctrl+b を押してからコマンドキーを押す、という操作感覚もそのまま活かせます。
操作に迷ったら ctrl+b に続けて ? を押しましょう。現在のキーバインド一覧がその場で表示されます。Herdrはマウス操作も優先設計(mouse-first)なので、右クリックメニューからペインの分割や切り替えも行えます。
ペイン・タブ・ワークスペースの操作
Herdrは「ペイン(画面分割)」「タブ」「ワークスペース」の3階層で作業を整理します。よく使うキーバインドは次のとおりです。
| 操作 | キーバインド |
|---|---|
| ペインを分割 | ctrl+b → v / ctrl+b → -(マイナス) |
| 新しいタブを作成 | ctrl+b → c |
| 新しいワークスペースを作成 | ctrl+b → shift+n |
| ワークスペースを切り替え | ctrl+b → w |
| デタッチ(セッションから離脱) | ctrl+b → q |
| キーバインド一覧 | ctrl+b → ? |
🔍 注目ポイント: ctrl+b プレフィックスはtmux・zellij経験者にはおなじみの操作体系です。「プレフィックスを押してから1キー」というリズムを覚えるだけで、分割もタブもワークスペースもすべて操作できます。
エージェント状態の可視化
Herdrの真骨頂が、各ペインで動くエージェントの状態表示です。
- 🔴 blocked: あなたの入力・承認待ちで止まっている(最優先で対応すべき状態)
- 🟡 working: エージェントが作業中
- 🔵 done: タスク完了
- 🟢 idle: 待機中(何もしていない)
サイドバーが全エージェントをこの4状態に集約してくれるので、どのペインが blocked(あなた待ち)なのかがひと目で分かります。しかもフック設定や事前準備は不要で、ゼロコンフィグで動くのが嬉しいポイントです。「全ペインを見て回って、どれが止まっているか探す」という無駄がなくなるわけですね。
状態検出はプロセス名の照合とターミナル出力のヒューリスティックで、設定なしに動きます。Claude Code・OpenAI Codex・Droid・Amp・OpenCode・Grok CLI・Cursor Agent・GitHub Copilot CLIなど16種類以上のエージェントで状態(idle/working/done/blocked)を検出できます(Gemini CLI・Clineは検出対象だがテスト未完了、それ以外のエージェントもマルチプレクサとして問題なく動きます)。さらに herdr integration install <エージェント名> で公式インテグレーションを入れると、セッション復元やより正確な状態通知が有効になります。
マルチエージェント並列開発
Herdrがもっとも輝くのは、複数のAIエージェントを同時に動かすときです。
典型的なレイアウト例
# 1. herdr を起動
herdr
# 2. ペインを分割(ctrl+b → v)して2ペインに
# 3. 左ペインで Claude Code を起動
claude
# 4. 右ペインをさらに分割(ctrl+b → -)
# 5. 右上で Codex、右下でテスト実行
# これで3つの作業が1画面に並ぶ
# blocked になったペインだけ対応すればOK
この構成なら、左のClaude Codeがフロントエンド、右上のCodexがバックエンドを進め、右下でテストを回す、といった並列開発が1画面で完結します。どれかが blocked になったら、その状態表示を頼りにそのペインへ移動して承認するだけです。
🔄 並列作業のコツ: 各エージェントに「フロントエンド担当」「バックエンド担当」のように明確なタスクを割り当て、blocked 表示が出たペインから順に対応していくと、複数エージェントを一人で無理なくさばけます。
AIコーディングエージェントの選び方に迷ったら、OpenAI Codex vs Claude Codeの比較記事も参考にしてみてください。得意分野で使い分けて、Herdrで束ねるのが効率的です。
リモートSSHでの利用
Herdrはリモートサーバー上のエージェントを、手元のターミナルからそのまま操作できます。
# リモートのHerdrサーバーに接続する
herdr --remote ssh://user@server
こうすると、手元のターミナルがリモートHerdrサーバーの「クライアント」になります。エージェントはサーバー側の本物のターミナルで動き続けるので、ノートPCを閉じても作業は止まりません。
「素のSSH + tmux」より優れている点
「SSHでつないでtmuxを動かせば同じでは?」と思うかもしれません。しかしHerdrの--remoteでは、素のSSH + tmuxではうまく動かないことが、そのまま動きます。
- 画像の貼り付け: エージェントにスクリーンショットを渡す操作がリモートでも機能する
- マウス操作: ペインのクリック切り替えやスクロールがそのまま使える
- 状態トラッキング: リモートのエージェントの working/blocked 状態も手元で把握できる
セッションはサーバー側で生き続けるため、スマホからSSHクライアントで接続して、外出先から blocked になったエージェントを承認する、といった使い方もできます。デタッチ(ctrl+b → q)してもサーバー側のエージェントは動き続けます。
Socket APIでエージェントを自動制御
Herdrにはローカルのソケット経由でワークスペースをプログラム制御できるSocket APIが備わっています。これを使うと、エージェント自身やスクリプトからHerdrを操作できます。
できること
- ワークスペースの作成
- ペインの分割・操作
- エージェントの状態購読(state subscription)
- 出力の読み取りと反応
つまり「リードエージェント(司令塔)」が、ヘルパーエージェントを自分で起動し、進捗を監視し、出力を読んで反応する——といったエージェントによるエージェントのオーケストレーションが、あなたがキーボードに触れることなく実現できます。
スキルとして追加する
エージェント連携用のスキルはコマンド一発で追加できます。
# Herdr連携スキルをグローバルに追加
npx skills add ogulcancelik/herdr --skill herdr -g
🔍 注目ポイント: このSocket APIこそ、Herdrが単なる「AIエージェント対応のtmux」を超えている部分です。エージェントがエージェントを指揮する自動化の土台になります。マルチエージェント開発の考え方はcmuxでのマルチエージェント開発の記事とも共通しているので、あわせて読むと理解が深まります。
ライセンスと商用利用
Herdrはデュアルライセンスで提供されています。
- オープンソース: AGPL-3.0-or-later(無料)
- 商用: 別途商用ライセンスが必要
個人利用やオープンソースプロジェクトではAGPL-3.0で無料利用できます。AGPLの条件(ネットワーク経由で提供する場合のソース開示義務など)が自社の利用形態に合わない企業向けに、別途商用ライセンスが用意されています。
AGPL-3.0は「コピーレフト」の強いライセンスです。Herdrを組み込んで社外にサービス提供する場合などは、商用ライセンスの検討が必要になることがあります。自社での利用形態がAGPLの条件に合致するか、導入前に確認しておきましょう。
🎮 理解度チェック
Q1: Herdrがtmuxに対して持つ最大の強みは?
Q2: Herdrで新しいタブを作成するキーバインドは?
Q3: herdr --remote が素のSSH + tmuxより優れている点は?
ベストプラクティス
Herdr運用のコツ
- ①ワークスペースをプロジェクト単位で分ける:
ctrl+b → shift+nで作成し、ctrl+b → wで切り替える - ②エージェントごとにペインを割り当てる: 状態表示を頼りに
blockedから順に対応する - ③長時間タスクはリモートで:
herdr --remoteでサーバーに逃がし、PCを閉じても走らせ続ける - ④キーバインドは
ctrl+b → ?で確認: 覚えるより都度呼び出すほうが早い
tmux・cmuxとの使い分け
- リモートサーバーでエージェントを束ねたい → Herdr(
--remote+状態トラッキング) - macOSローカルで完結、GUIと内蔵ブラウザが欲しい → cmux
- エージェントを使わない汎用のリモート作業 → tmux
🔒 移行のヒント: tmuxユーザーはプレフィックスが同じ ctrl+b なので学習コストが低く、Herdrへの移行はスムーズです。まずは1プロジェクトで試して、エージェント状態表示の便利さを体感してみましょう。
よくある質問
Herdrの読み方は?

「ハーダー」と読みます。英語の "herd(群れ)を導く人 = herder" に由来し、公式のキャッチコピーも「one terminal for the whole herd(群れ全体を1つのターミナルで)」です。複数のAIエージェントを1つの群れのように束ねる、というイメージですね。
Herdrは無料で使えますか?

はい。オープンソース版はAGPL-3.0-or-laterライセンスで無料で利用できます。個人利用やオープンソースプロジェクトなら追加費用はかかりません。AGPLの条件(改変版をネットワーク提供する場合のソース開示義務など)に従えない組織向けに、別途商用ライセンスが用意されています。
HerdrはWindowsで使えますか?

Linux・macOSが安定版で、Windowsはプレビューベータの段階です。WindowsではPowerShellのインストールスクリプトで試せますが、安定して使いたい場合はWSL(Windows Subsystem for Linux)上のLinux環境で動かすのも有力な選択肢です。
tmuxから乗り換えるべき?併用はできますか?

プレフィックスキーがtmuxと同じ ctrl+b なので移行コストは低めです。AIエージェントを複数走らせるならHerdrの状態可視化が大きな武器になります。一方、エージェントを使わない汎用のリモート作業はtmuxのままでも問題ありません。無理に一本化せず、用途で使い分けるのがおすすめです。
スマホからエージェントを操作できますか?

できます。サーバー上でHerdrを起動しておき、スマホのSSHクライアントから接続すればOKです。セッションはサーバー側で生き続けるため、デタッチ(ctrl+b → q)してもエージェントは動き続け、外出先から blocked になったエージェントを承認する、といった使い方もできます。
Claude Code以外のエージェントも使えますか?

はい。Codex・Droid・Amp・OpenCode・Grok CLI・Cursor Agent・GitHub Copilot CLIなど16種類以上のエージェントで状態検出に対応しています。リストにないエージェントも、Herdrは通常のターミナルマルチプレクサとして問題なく動かせます(その場合は状態検出が効かないことがあります)。
📝 まとめ
今回はHerdrについて学びました!
Herdrは、AIコーディングエージェントを1つのターミナルで束ねるために設計された、新しいタイプのマルチプレクサでしたね。覚えておきたいポイントをまとめます:
- 単一Rustバイナリ: 既存ターミナル内で動作、GUI・アカウント・テレメトリなし
- エージェント状態の可視化: working / blocked / done / idle を自動検出(16以上のエージェント対応)
- キーバインド: プレフィックスは
ctrl+b、分割はv/-、タブはc、ワークスペースはshift+n/w - リモートSSH:
herdr --remoteで画像貼り付け・マウス・状態トラッキングまでシームレス - Socket API: エージェントがエージェントを指揮する自動化の土台
AIエージェントを複数動かす開発が当たり前になる中、「どれが止まっているか」を一目で把握できるHerdrのようなツールは、生産性を大きく左右します。tmuxから移行しやすいのも嬉しいポイントです。
同じくエージェント連携に特化したツールが気になる方は、cmuxでAIコーディングを加速するや、cmuxとtmuxの違いの記事もぜひチェックしてみてください!
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